Android (Xperia M2)
iPhone 3G以来のiPhoneユーザだったけれど、iPhone 5の2年縛りの契約が切れるのを機にローエンドのAndroid端末 (Xperia M2) に乗り換えた。安かったからそれなりに満足している。簡単に言ってしまえばそうなる。簡単に言わない場合の、ながーい話は、以下のように続く:
要約
「安かったからそれなりに満足している」では短すぎるけど、このあとに続く15,000字(!)の文章では長すぎる。だから140字以内で要約すると、以下のようになる:
長年iPhoneユーザだったけど、もう性能は要らないしiOS 7はダサいし飽きたし、いまいち毎月高いお金払う気分にならなくなった。そこで安物のAndroid端末に手を出した。細かい不満はたくさんあるけど耐えられないほどではない。むしろいいところも多く、値段を踏まえれば充分いい。(139字)
それじゃあ、はじまります。
はじめに
これは、iPhoneを6年間使ってきたユーザがはじめてAndroid端末を使うにあたってのいろいろをひとつにまとめた話だ。乗り換えの経緯を感傷的に語るところからはじまり、端末の簡単なレビュー、Android OSのレビューなどをしたあと、再び少し感傷的になって「はあ」と言って終わる。
構成は以下のようになる:
-
「どうしてAndroidにしたのか」 では、iPhoneユーザとしての自分を明かし、そんな自分がAndroidに乗り換えるまでの経緯を説明する。事実の羅列に徹したつもりだけれど、他のセクションと比べるとポエミーに読める(そもそも、他人のこういう話はわりとどうでもいいからだろう)。
-
「Xperia M2について」 では、今回買ったローエンドのAndroid端末について簡単に説明する。どうせいまさらこの端末を買う人もいないと思うので(全員ZenFoneを買うのだから)簡単にまとめた。
-
「Androidについて」 では、長年iPhone (iOS) ユーザだった自分が見たAndroidの特徴的な部分をiOSと比較しながら書く。このセクションが、だいたい全体の半分を占めるくらいの量がある。
-
「困ったこと」 では、Androidに乗り換える際にあった障害をハードウェア・ソフトウェア含めて説明する。
-
「まとめ」 では、(なんと)今までの話をまとめる。
自己満足のために書いてきた文章だけど(そうじゃなかったらこんなに長く書けるだろうか?)、そこには少しくらいは面白い視点があると思うし、参考になることもあるかもしれない。そういうことも意識した。少しは誰かの役に立ったら嬉しい。
どうしてAndroidにしたのか
iPhoneをどのように使ってきたか
まずはこの話のすごく大事なポイントだけど、おれはiPhoneのヘビーユーザーではなかった。
電話はほとんど使わないし、モバイルデータ通信 (3G/LTE) もあまり使わない。それにゲームもほとんどしない。よく使うのは、Web、メール、スケジュール、ToDo、音楽(Podcast)くらい。ああ、それから地図と乗り換え案内も。これでだいたいiPhone利用の8割くらいを占めていたと思う。
だからキャリアに多くを求めないし、端末にそこまでの性能も求めない。iPhoneを使い続けてきた理由のひとつは、Macユーザというのもあって、これらの基本的なタスクがいちばん簡単にできるからだった。もうひとつの理由は、美しいそれに愛着を持っていたからだった。
どうしてAndroidにしたのか
2007年1月、当時いわゆるガラケーに嫌気がさしていたおれにとってiPhoneの登場は夢のようだった (and we are calling it… iPhone!) 。でもiPhone 5のころには、最新のiPhoneがもはや自分のための製品では無くなりつつあることに気づいた。発売後すぐに買わない初めてのiPhoneだった1。それはiPhone 6で決定的になった。もう性能が倍になろうが、カメラが進化しようが、画面が大きくなろうが、モバイル決済対応しようが、あの時計と連携しようが、全部どうでもよかった。
その間にはiOS 7もあった。これまで程度の差こそあれApple製品に対して抱いてきた信頼やある種の尊敬みたいなものを、失望とか嫌悪感とか軽蔑みたいなものが圧倒的に上回った初めての経験だった2。あれ以降もうiOSに抱いていた特別な愛着は失われた。一方でGoogleが発表したMaterial Designは魅力的に見えた。そういう状況では、もうiPhoneにこだわり続ける理由が分からなかった。
最後に背中を押したのはキャリアだった。3大キャリアは揃って新しいプランを用意し、iPhone 6のために毎月7000円払えと言った。でももう、おれはそのために7000円も払う気はなかった。これまでの6年間とは決定的に違い、おれはiPhone 5に完璧に満足していて、それが壊れるまで使い続けることが出来ればそれで充分だった。でもキャリアの設定したプランでは、そうすることは経済的にまったく合理的ではなかった。iPhone 6に買い換えないと実質的には損をする。もし仮に買い替えたとしても、またこれに2年間付き合うのか? 2年後にまた買い替えさせられるのか? ・・・はぁ。MVNOとSIMフリー端末を選ぶことにした。
端末を選ぶにあたって、iPhone 5sも検討した。でもキャリアが変わったという理由だけでiPhone 5とほとんど同じ見た目のデバイスを買うのは癪だった。使い続けさせていただくためだけに余計なお金を払う気がした。Androidに乗り換えたらどうなるのかしばらくシミュレーションしてみたけれど、ほとんど支障は無さそうだった。それに、もし必要ならiPhone 5をテザリングで使うこともできるという保険もあった。ということで、できるだけ安いAndroid端末を買った。
Xperia M2について
おれの買ったXperia M2は、当時日本で買えるLTE対応Android端末の中ではいちばん安い部類(25,000円くらい)で、性能も悪くなく、評判も上々だった。上を見ればもちろんハイエンド端末もあったけれど、はじめてのAndroidでもし失敗したらと思うと手を出すのが怖かったし、何よりそれは自分の要求に対してオーバースペックに思えた。もう最低限でよかった。
実際に端末を触ると「値段なり」という言葉が浮かぶ。手に持ったとき、iPhone 5のようなガッシリした金属の質感と比べると、もろにプラスチック感があり安っぽい。そして何より表裏ともに指紋がたくさんつく。iPhoneでいうところの「耐指紋性撥油コーティング」が無いんだと思う。これが最大の欠点だ。
4.8インチのスクリーンを持つ端末は、4インチのiPhone 5と比べると一回り大きい。持ちにくいし、ポケットに入れるとごつごつして邪魔だ。しかしiPhone 6しかり、いまのスマートフォン界隈ではこの程度のサイズが標準くらいか、もしかしたら小さいくらいかもしれない。おれはiPhone 5のサイズが片手にしっくりきて好きだけど、そういったサイズ感のスマートフォンは残念ながらほとんど無い。
性能はiPhone 5とほとんど差を感じない。ディスプレイのピクセル密度は229ppiで、iPhone 5の326ppiよりもだいぶ劣るけど、それもあまり差を感じない。どちらかといえば視野角や階調表現力が気になることがある。カメラのクオリティはiPhone 5より更に2世代くらい前のレベルに感じる。
ちなみにもし今買うなら、大きいけどZenFone 2 (ZE550ML) にする。乗り換えるときにはサイズのことをすごく気にしていたけど、実際に4.8インチの端末を使ってみると、iPhone 5のように片手で握れるサイズでないならもう4.8インチも5.5インチも大差ないような気がするから。まあ、5.5インチの端末を使ったらやっぱりでかくて嫌だと思うかもしれないけど。
Androidについて
Xperia M2を買う直前に何週間かNexus 7 (Lollipop) を使ったことがあった。それを含めて今回がはじめてのAndroidということになる。ここでは、そうして使ってみて気づいたところをiPhoneと比較しながら書く。
ただし、素のLollipopだったNexus 7は今は手元に無くてよく覚えてないから、基本的にはXperia M2のことについてになる。だから以下で言及されることの一部は、純粋なAndroidの特徴ではなくXperiaの特徴かもしれない(まあ、いずれにせよ、メーカーが自由にカスタマイズできるのがそもそもAndroidというプラットフォームの特徴なのだ)。
ホーム画面
まずはアイコンを自由に並べられることがすごくいい。iPhoneはアイコンを置きすぎるとゴチャゴチャして見づらいし、かといって置かなすぎると(上から順に並んでいくので)遠くてタップしづらい。
それから、おれはiPhoneではほとんど使わないアプリをひとつのフォルダにしまっていたけど、そうすると1画面にアプリを9個ずつしか表示できないせいで一覧性がすごく悪い。しかもそこからアプリをひとつ消したり移動させたりすると、その空いたスペースを自動で(ページをまたいで)詰めてくれないから各ページがスカスカになる。Androidでは自発的にアプリをホームに置かない限りは、全てのアプリはドロワー(drawer; 引き出し)の中にしまわれている。このほうが自分の使い方に合ってて好き。
ちなみに、おれはLollipopのルックスが好きなので、今回買ったXperiaが素のAndroidでもなければLollipopでもないことが不安だった。でもNova Launcherなどのアプリを使えばだいたいの見た目や一部の機能はカスタマイズ出来る。完全に素のAndroidのようにはならないし、Lollipopの通知のような新機能も使えない(うらやましい)けど、許容範囲ではある。まあ、いいか。
ナビゲーションバー
画面下に並ぶ3つのボタンについて。
まず第一に、このボタンが(多くのAndroidデバイスにおいて)ソフトウェアのボタンであって、iPhoneのようにハードウェアのボタンではないことが嬉しい。iPhoneの故障のうち約半分がホームボタンの接触不良で(要出典)、実際におれもそれでiPhoneを交換したことがある。いつかまた壊れるんじゃないか、と思いながら使うのはつらい。
「戻る」ボタンは、「Androidのいいところ」みたいな話になるとよく引き合いに出される。確かに、このボタンでアプリ間の行き来は簡単になって便利だ。でもボタンを押したとき、同じアプリの上の階層に戻るときと、別のアプリに戻るとき(あるいはホームに戻るとき)があって、挙動がよく分からないときも多い。そういう微妙な局面では混乱するし、がっかりすることもある。
一方ホームボタン右側の、最近使ったアプリを表示するボタンは、「戻る」機能充実のためだと思うけど、iOS(ホームのダブルクリック)よりも使われない気がする。ちなみにWindows Phoneは戻るボタンの長押しでこの画面を表示するようになっているらしい。面白い。
Lollipopの戻るボタンは単純な三角形だけど、それだとどっちを向いてるのかよく分からないし、四角のボタンも説明不足だと思う。単純な図形がなにかミニマルでクールな感じがするのはわかるけど、iOSのGoogleアプリみたいにしたほうが分かりやすい。せめて「戻る」の三角は右側の辺を開けて「 < 」みたいにしてほしいなあ。
アプリ間連携(インテント)
戻るボタンがAndroidのいいところとして挙げられるとき、それはつまりアプリ間の連携が素晴らしいということを言っている。「他のアプリに移動しても、このボタンで戻って来れるんだよ」と。でもこの良さを説明してもiPhoneユーザにはあまり響かない気がする。そもそもiOSではアプリ間の移動をそれほどしないからだ。それに比べてAndroidはアプリ間の移動を本当によくする! ピョンピョン移動するので、それで混乱してしまうくらいに。でもiPhoneしか使ってないとその感覚がよく理解できないので、その良さというか意味合いもよく分からない。
例えばBubbleUPnPというアプリでは「ブラウズはうちでやるけど動画の再生は外部のプレイヤーで」ということらしく、MX PlayerだとかVLCみたいなアプリを別に用意してそれで再生する。それが「いちいち別のアプリに移動する」という感じでは全然なく、自然に移動し、そして戻るボタンで自然に戻ってくる。自然。実際にAndroidのプラットフォームの中で体験してみると、あぁなるほどという感じ。
それからGoogle検索アプリで検索すると、検索結果の表示まではアプリ内で行うけど、各リンクを実際に開くのは別のブラウザアプリがやる。こういうとき、iOSの場合はブラウザをアプリ内に備える形になる。その場合Safariで有効になっているiCloud Keychainはアプリ内ブラウザだと効かないので、もどかしい思いをすることも多い。しょうがなくSafariで開き直して・・・などなど。
この仕組みは便利でもあるけど、ややこしくもある。自分がどこにいて何をしているのか分からなくなることがあるし、そういうときに限って戻るボタンを押してもホームに戻ったりして役に立たなかったりする。だから、あまり胸を張ってAndroidの良いところだとは言いづらい。
バックグラウンド動作
例えばこういう文章を書きながら撮るスクリーンショットは、撮影したらすぐDropboxにアップロードしてほしい。ところがiPhoneでは、基本的には撮影したあとにわざわざ(わざわざ!)Dropboxのアプリを開かないとアップロードしてくれない。Androidでは勝手にバックグラウンドでアップロードしておいてくれるので本当に便利。
ただバックグラウンドで何が動いてるのか見ようと、設定で実行中のアプリを見ると、わけが分からないものがたくさん並んでいて困惑する。例えばおれがそこに並んでいる(全く覚えのない)com.qualcommなんとかを停止させてしまったとして、そのあとも端末は正常に動くんだろうか。というかそもそも、こんなもの表示するべきなんだろうか。こういう一般ユーザが見ても意味をなさないようなものは、開発者向けオプション(という設定がAndroidにはある)をオンにしたユーザにしか表示されないとか、そういうやり方が普通だと思うんだけどな。
こういうのはこの画面だけじゃない。通知を許可するアプリを選択する時(たぶんXperia独自)も、意味をなさないアプリがたくさん並んでいる。こういうものを普通に許しているAndroidやメーカーを軽蔑する。こういう状況のままでは、Androidは洗練されてないと思われてもしょうがないし(実際にされてない)、詳しくない人には簡単に勧められない(「え? ううん、その『ANT HALサービス』っていうのは何でもないの。気にしないで!」)。
Google Play
まずGoogle Playは、パソコンのブラウザでアクセスできるのがいい。気軽だし、いくつかタブを開いてどれをダウンロードするか検討することも簡単にできる。App Storeは(妙に重い)iTunes Storeからじゃないとアクセスできないし、複数のタブを開くことも当然できず使いづらい。
それからブラウザから端末に直接インストールの指示を出すことができるのもいい。これはApp Storeでも同じようなことができるけど、あれは「iTunesでダウンロードしたものをiPhoneも自動でダウンロード」という形になっていて、結果としてはほとんど同じなんだけど気持ちが結構違う。Google Playのように、指定した端末にめがけてダウンロードするというほうが安心感があっていい。
(さっきMacからiTunes Storeをブラウズしていたら、iPhoneではしっかり最新のバージョンまでアップデートされているアプリをiTunesではそう認識していないようだった。だいたい今時ダウンロードしたアプリをiTunesで保存しておく意味ってあるんだろうか。AppleはiTunesのあり方を考え直したほうがいい。もうお荷物になってるように思える。)
アプリのダウンロード数を表示してくれるのもいい。Google PlayはApp Storeのように審査がないのもあって、そのアプリの信頼性とかクオリティが不安な時も多い。そういうときダウンロード数を見ればどのくらい人気なのかはっきり分かるから安心できる。それからダウンロードして2時間以内ならアプリの返品ができるのも素晴らしい。
ただアプリの説明文の日本語がおかしいものがある。人気アプリの1Passwordも「初演パスワードマネージャでセキュア財布」、Google謹製のInboxでさえ「あなたが戻って重要なものに得ることができます」3。開発者が日本語の説明文を用意しないと、このリードの部分だけ日本語に機械翻訳されるんだろうか? でもこんな文章が役に立つのかな。変な日本語だったら英語のほうがまし、というのは少数派なんだろうか?
ちなみに上のスクリーンショットの真ん中あたりにある4つのアイコン(ダウンロード数、レーティング、カテゴリ(仕事効率化)、類似のアイテム)は、一番左の「ダウンロード数」以外の3つはタップできる。これに気づいてる人はどれくらいいるんだろう。あとアプリのアイコンをタップすると高解像度のアイコンが表示されるみたいだ(いま知った)。この機能いる?
混乱する設定画面
よくApple製品を誉め称えるのに「細部へのこだわり」みたいな意味合いの言葉が出てくる。おれは今まで、これを熱狂的なAppleファンたちによるレトリックだと思っていたところがある。10年くらいApple製品ばかりに囲まれて暮らしてきたせいかもしれない。でも今回Androidを初めて使ってみて、ああ本当だ、と思った。熱狂的なファンのレトリックじゃなかった。
つまり逆に言えば、ここでは、Androidの雑さ、こだわりの無さ、みたいなことになる。それは例えば今まで挙げてきた、実行中として並ぶ謎のアプリだったり、Google Playの機械翻訳だったり、それから「設定」アプリと「Google設定」アプリが別に存在することもそうだ(何年前から言われてるんだ)。そして今から説明する、よく設定画面で起こる混乱も。
まずAndroidとiOSのDropboxアプリの設定画面を比べるとよく分かる。スクリーンショット右側のiOSは、タップして次の画面に遷移する項目には右向きの三角があるし、それとは別の特別なアクションを起こすものについては色のついた文字で表示されたり(iOS 7以降の世界観では「押せる」という意味)センタリングされたりと明確に区別されている(色付きとセンタリングの間にどういう違いがあるのかはよく分からないけど)。一方スクリーンショット左側のAndroidのほうは、それぞれの項目をタップしたとき何が起こるのか分からない。
これはDropboxだけじゃない。いろんなアプリで起きている。
上のスクリーンショットの一番左はGoogleの「フォト」アプリの自動バックアップ設定の画面。一番上の「写真をバックアップ」 をタップすると、ポップアップが開き、WiFiのときだけかそれともモバイルネットワークのときも行うか聞かれる(スクリーンショット真ん中)。そしてその設定の状況がすぐ下の文に反映される(「Wi-Fi接続を使用できる場合のみ」)。
その下の 「ローミング」 と 「充電時のみ」 は、右側のチェックを外しても説明は「〜バックアップします」のまま変わらない。「〜しません」にはならない。つまりこれは上の例とは違って現状の設定の説明ではない。(真ん中のスクリーンショットで、 「充電時のみ」 のチェックが外れても文章が変わってないのが少しだけ見える)
さらにその下の 「すべてバックアップ」 をタップすると、今すぐバックアップしようとしてくる(スクリーンショット右)。これはまったく設定ではない。アクションを起こす項目だ。
このアプリひとつの設定だけでも混乱している状況が分かるけど、ほかのアプリの設定画面を見ると、さらに混乱は増していく。
例えばシステムのテザリング設定の画面の一番下 「Bluetoothテザリング」 は、チェックを入れたときと外したときで説明の文章が変わる。「フォト」アプリの 「ローミング」 と 「充電時のみ」 の設定を思い出してほしい。あれはチェックを入れようが外そうが同じく「〜します」という行為を表す文章だった。今回の例では、現状の設定を説明する文章になっている。さっきの例を見たあとでは、これにチェックを入れるとインターネット接続を共有しなくなりそうに思える。
それからgReaderの一番上の項目 「すべて既読にする」 、これは何をする項目だろうか。 「写真をバックアップ」 のときのようにポップアップが開いて何かを聞いてくるだろうか。それとも 「すべてをバックアップ」 のときのように、今開いているフィードを全部既読にしようとするアクションなんだろうか。正解は、「すべて既読にする」機能の詳細を設定する画面に遷移します。よいこのみんな、分かったかな!?
最後はシステムの設定画面だ。左側のスクリーンショットの真ん中に 「使用情報」 という項目があり、その下の説明に「匿名のデータ/使用統計情報をSony Mobileに送信します」と書いてある。これは何かな? タップしたら情報を送信するアクションかな? いや、文脈からいったら期待薄だね。ということは・・・ 「使用情報を送信する」 という設定があって、それがオンになっていると思ったかな? 残念でした! 設定はあるけどオフです! ボッシュート!! (しかもポップアップじゃなくて画面遷移です!)
・・・こういうふうに、まず各項目をタップしたとき何が起こるか予測できないし。それにその下の補足のテキストも、現在の設定の状況が書いてるのか、それともこれから行おうとしているアクションが書いてあるのか、あるいはただ漠然とした説明が書いてあるのか、よく分からない。
正直言って、これで本当に困ることなんてほとんどない。でも、こういうのってすごく小さなことだけど、「これどういう意味かな?」とか「押したらどうなるかな?」と常に無意識レベルで考えなきゃいけなくて、特に初めて使うアプリでは、小さいけれど確かなストレス(小確ス)がたまる。よくApple製品が「使いやすい」とか「使っていて気持ちいい」とか言われるのは、こういう部分をしっかりと詰めているからだと思う。結局のところ、細部へのこだわりというのは、どれだけアルミニウムが綺麗に削れたかという話だけではない。
困ったこと
ここからは、実際にAndroidを使うにあたって困ったことの話。解決されたこともあるし、解決されなかったこともある。USB以外は端末を買う前から分かってたことなので、そういう意味では大きな問題ではない。
パスワード・マネジメント
MacでもiPhoneでもSafariを使っていたので、パスワードは全部iCloud Keychainに任せっきりだった。デバイス間でパスワードをシンクしてくれるので、Safariを使っている限りは満足できた。でも残念ながらAndroidにSafariはない。こまった。Chromeには独自のパスワードマネジメントの仕組みがあってMacとシンクできるけど、MacでChromeを使う気はない5。
ということで、おとなしく1Passwordを使うことにした。MacのKeychain Accessからひとつひとつ手動で1Passwordにコピーしていった。もう少し自動でやる方法もありそうだったけど、重複したり使ってなかったりするパスワードもたくさんあったので、それを整理する意味も込めて手でやった(それに数もそれほど多くなかった)。めんどうだけど少しすっきりした。そのあとも、1PasswordはKeychainとは自動でシンクしてくれないので、新しいサービスなどにサインアップしたときには忘れずに1Passwordにも追加しておかなくちゃいけない。
Macの1Passwordは30日の試用期限を過ぎても何の機能が制限されてるのか分からないくらい普通に使えているので、まあいいかとそのまま使っている。ほとんどSafariのAutoFillで済むから、あまり使う機会は無いけれど。
USBケーブル
だいたい、USBケーブルの種類が多すぎる。まずMiniだったっけ、それともMicroだったっけ?がある。ああMicroか、と思い出してもMicro USBのAとBがある・・・。まあそのくらいはいい。おれは実際に電器屋でいくつかのUSBケーブルを前に戸惑ったけれど、それはそもそも売り場を間違っていたからだった。おれは一般ケーブル売り場を見ていたけど、スマートフォン用のケーブルは違う場所にもっと広いスペースで用意されていた。
危ない危ない、と思いその売り場に行くと・・・もっとたくさんの種類のUSBケーブルがあった・・・。規格はMicro USB (B) 一択なものの、「2A出力対応」「急速充電対応」しまいには「充電専用」まである。充電専用のUSBケーブルがあるなんて初めて知った(データの転送はできません、と小さくしっかり書いてあった)。たくさんのケーブルを前に途方に暮れる。出力のアンペアは大きいほうが常に嬉しいのか? 急速充電なるものの恩恵を自分の端末は受けられるのか? 分からない。
だいたい、家にあったMicro USBのケーブル(2本)を端末(Nexus 7もXperia M2も)に繋いでみても認識されないのがそもそもの始まりだった(そのあと100円ショップで試しに買ってきたものもダメだった)。規格に合ってるはずのケーブルが使えないってどういうことだ。その点Appleのケーブルは楽だ。Micro USBのケーブルよりは多少高いかもしれないけれど、少なくともMade for iPhoneのケーブルを買えば間違いない6。プラットフォームの特徴がケーブルにもあらわれてると思う。高いけど統一されてて安心感のあるiPhoneと、安くて選択肢は多いけれど秩序を欠いたAndroid。
サイレントスイッチ
iPhoneは2007年の初代からずっと、ボリュームボタンの上にサイレントモードに切り替えるスイッチがある。でもAndroid端末にはほとんど(すべて?)このスイッチが存在しない。切り替えるためには、電源ボタンを押してメニューを表示させるとか、音量を下げるボタンを押し続けるとか、どれも手間がかかる。なんだこれは。iPhoneのようにハードウェアのスイッチを操作するのと比べると段違いに面倒。
しかし、幸いにも、Androidには柔軟性があった。Triggerというアプリを使って、サイレントモードへの切替を自動化することができた。自宅のWiFiから出たら自動でサイレントにするように設定すれば、外では自動でサイレントになる。逆もまたしかり。はじめのころは本当に自動で切り替わったか不安になることもあったけど、今のところ問題ない。とっても便利。なんだこれは。iPhoneのようにハードウェアのスイッチを操作するのと比べると段違いに簡単!
まとめ
機能に関していえば、ほとんどの部分でAndroidのほうが優れていて便利だと思う。そのこと自体はおそらく今に始まったことじゃなく、数年前からそうだったはずだ。問題は、少なくともおれにとっての問題は、それは充分に美しくて使いやすいのか?ということにあった。
「充分に」というのが単純に「iPhoneに匹敵するくらい」という意味であれば、それはノーだと思う。確かにAndroidは便利なことが多いしMaterial Designは綺麗だけど、それはおれにとってはここまで挙げてきたような細部の杜撰さを無視できるほどではなかった(個人的には、そもそも日本語フォントが丸ゴシックなのが嫌だ)。ハードウェアに関しても、いくらGalaxy S6が高級感があるといっても、それでもiPhoneのほうが好きだ。おれはiPhoneとAndroid端末が同じ値段だったら、今でも間違いなくiPhoneを選ぶ。要は、10万円のデバイスとしては、Android端末はダサすぎる。
でも、確かに「10万円のデバイスとしては」そうだけど、Androidには3万円の端末がある。ハードウェアの質は落ちるし、引き続きソフトウェアのデザインは杜撰だけど、もう値段なりに思える。つまり3万円ならこんなもんだろって思えるし、それに、そうなるとそのぶん機能の充実が際立つ。だからこの値段で得られる端末の体験としては、充分に美しくて使いやすいと思う。差額で新しい靴とか、まあ何でもいいけど、買えるならそれでいいんじゃないかな。
ということで、おれはローエンドのAndroid端末に満足している。最高のデバイスによる最高の体験ではないけれど、悪くないデバイスによる上出来な体験くらいではある。結局のところスマートフォンに求めるものはその程度で充分だったんだろう。おれにとっては、モンクレールのダウンジャケットやフルサイズ一眼やブリタニカ百科事典が必要ないように、もうiPhoneも必要ないのかもしれない。
おわりに
もうAndroidにしてから3ヶ月以上経った。本当は乗り換えてすぐのテンションで記事を書こうとしていたがやめた。はじめのうちは失ったものがすごく大きく感じられたり(Android最悪!)、あるいは逆に自分の選択を正当化しようとしがちになるからだ(Android最高!)。でも3ヶ月も経つと、だいたいのことに対して「まあこんなもんかな」と思えるようになる。ということで改めて書くことにしたら、信じられないくらい長くなった。
これを書きながら、次に買う端末はどっちのプラットフォームになるか何度も考えた。あるときは「次もローエンドのAndroid端末」と思ったし、あるときは「次はやっぱりiPhoneに戻ろう」と思った。15,000字以上タイプして1,000回近く編集したあと、結論は、やっぱり分からない。そもそもだいぶ先のことになるだろうから考える意味もあまりない。まあもう2年縛りはないし、好きなときに好きなようにするんだろう。なんだかもうApple製品に強い魅力を感じなくなったのが悲しくもあるし7、選択肢が増えたことが嬉しくもある。はあ。
-
2年ごとの契約というのを考慮して。iPhone 3Gは発売してすぐ真夏の表参道に5時間くらい並んだ。iPhone 4は渋谷のApple Storeで予約して発売日に買った。iPhone 5は発売してから数ヶ月後になんとなくヨドバシカメラに行って買った。 ↩
-
幸いにもそのあとのYosemiteやApple Watchなどのおかげで、こういう経験にはもう慣れることができた。これまで欠かさず見ていたAppleのKeynoteも見なくなった。 ↩
-
英語では「初演パスワードマネージャでセキュア財布」が “Premiere Password Manager and Secure Wallet” 、「受信トレイを整理物事を維持し、あなたが戻って重要なものに得ることができます。」が “Inbox keeps things organized and helps you get back to what matters.” だった。 ↩
-
“すべて既読にする”の後、フィ …なんだろう? オンにできない・・・。 ↩
-
MacのChromeのメニューバーから、Chrome > Import bookmarks and settingsでFrom: Safariにすると “Passwords saved in the Mac OS X Keychain will be used to help you sign in without typing.” と表示されるので、MacのChromeがOS XのKeychainにアクセスして、これがいい感じにAndroidのChromeと同期してくれないかと思ったけど、そもそもMacですらChromeがKeychainを見ている気配がなかった・・・。うそつき・・・。 ↩
-
Amazonでは、Made for iPhoneではない製品がさもApple純正かのように売られるというカオティックな状況になっているけれど。 ↩
-
次の問題は、今使っているMac (MacBook Pro (Mid 2010); Mavericks) がもし壊れてしまったときのことだ。WindowsやLinuxも考えてはみたけど、このYosemite後の世界でもMacのほうがまだましに見える。Macのほうがまだまし・・・。本当に暗澹たる気分になる。 ↩