The Last of Us Part II
前作は去年の今頃にLeft Behindを含めてプレイして、大好きなゲームになった。今作はメディアのレビューもほぼ軒並み絶賛だったのでめちゃくちゃ期待していたけど、いざはじめてみるとひたすら悲惨で気が滅入る方向にストーリーが進んでいくので、プレイ中は憂鬱と恐怖と嫌悪と緊張の連続だった。でも結局やめられず週末ぶっ通しでやり続けてしまった。評価をつけるとしたら9/10くらい。気が滅入るので2周目やりたくならないので-1!
クリア後Metacriticのユーザースコア等を見ると、一般ユーザからの評価がストーリーのせいで真っ二つに分かれる感じらしい。前作のジョエルとエリーに対して非常に強い思い入れがあって、あの雰囲気が継続することを期待している人は今作を期待外れだと感じてしまうのかもしれない。
以下ずっとネタバレ。
つらい
前作が「世界を敵に回しても家族を守る」みたいな力強いけどナイーブなドラマだけにフォーカスすることで無視してきた陰惨な部分を今回全部ぶつけてきた感じ。ひたすら「つらい」しかないストーリーで、基本的には嫌になることしかない。ジョエルが目の前で無残に殺されるとこから始まって、もう最初から最後まで絶望的で悲惨。おれはもうやめてくれと思ってるんだけどストーリーはやめてくれない。悲惨な方に転がるようにできている。ハッピーエンドにすすむ分岐はない。あったとしても前作の時点でその選択肢を誤っている。もう選択の余地はない。
終始エリーに共感できる場面はほぼ無く、ジョエルの復讐のためシアトルに出発すると言い出す時点でもう理解できない。そもそもジョエルが殺されたとき、現場に一人で彼を助けに行って自分も殺されかけたんじゃなかったか。その後もアビーを殺すためにひたすら復讐の旅を続けようとするエリーには、精神的に追い詰められていて可哀想ではあるけれど共感はできない。
一方でジョエルを殺したアビーは、殺害の動機や仲間内での人間関係が詳しく描かれるし、レブとヤーラを救うためWLFを裏切る(WLFとセラファイトの殺し合いもまた悲惨でむごたらしい)という前作のジョエルとエリーと似た展開を辿るので、相対的に「いいやつ」に見える。というか逆に言えばジョエルとエリーも「クソ野郎」だったのだとわかる。
だから劇場で二人が対峙するときには、もうかつてのようにエリーを純粋に見れなくなっていることに気づく。それがまたつらい。もう人類の希望でも無く、守られる小さな女の子でもなく、ただジョエルの復讐のために大量の人間を殺してきた女だから。
シアトルでの復讐が失敗した後、トミーに言われてサンタバーバラに再び復讐に向かうエリーはもう見てられないほど痛々しい。海辺でアビーと対決して止めを刺そうとする最後の一瞬、あんなにかわいかったエリーが骸骨みたいな醜い表情をしていたのが忘れられない。そこでアビーを殺さなかったことがこの作品の唯一の救いだった。まあその後の展開もまたつらいんだけど。続編出てももうやりたくないよ(もう「エリーのクラスにアビーが転校!?!?」みたいなドタバタ学園ラブコメにしてほしい)。
目を背けたくなるような状況が多々あるので、あえて強くショッキングな表現をすることで無理やりプレイヤーの感情を引き剥がしてゲームの世界観に引きずり込んでいるのでは? 「余命x日の恋人」と同じでは?と思わないこともなかった。でもあんまりそれを考えすぎても結局程度の問題な気がしたし、じゃあそもそも何のために物語を物語るのだろう?となってしまったので、エンターテインメントなんだからいいじゃん!と思考停止することにしました😐
ゲームであることの良さ
ゲームのストーリーが注目されるときよく映画やドラマを引き合いに出されるけれど、ゲームの良さは自分でプレイすることによる圧倒的な没入感にある。ただプレイ動画を見てるだけなのと実際にプレイするのでも雲泥の差がある。
雰囲気づくり
まず空気感が凄まじくて本当に自分がそこにいる緊張感がある。単純にグラフィックの性能向上もあると思うし、環境音や遠くから聞こえる感染者の声、ときには無音であることなど、サウンドもすごく効いてる。
ある薄暗い建物で、テーブルの向こう側にあるアイテムを取りに行くのすら怖かったことがあった。特に敵がいたわけでもないし、ゲーム内の距離で1mかそこらなのに。よくテレビでやる肝試し企画で「もう怖くて一歩も動けないですー」と言うアイドルになってしまったと思った。本当にもう部屋の端でライト消してただ丸まっていたかった。ただの薄暗い部屋ですら怖くてそこから動きたくなくなるくらいなのに、まして真っ暗な建物内でライトつけて探索してる時の閉塞感といったら! 外に出て日の光を浴びたとき、新鮮な空気に触れてようやく息ができると思った。
視点の転換
発売まで秘密にされていたアビー操作のパートで、彼女の物語、つまり父親をジョエルに殺されたことからはじまって、WLFのこと、レブとヤーラのこと、エリーに殺された仲間たちのことなどがアビー目線で丁寧に描かれる。そこで一番感動したのは、アビー操作パートの最後にそのままエリーと対決すること! 今まで自分が操作してきたエリーが、この時は敵になる! すごい演出! 今までなんだかんだ言って「エリーは父親を目の前で殺されているわけだから復讐も止むを得ないよね」という感覚でいたけど、散々自分(アビー)の仲間を殺された上に今度は容赦無く自分(アビー)を殺そうとしてくるエリーは恐怖の殺人者でしかなかった。怖かった。
ぼくがやりました
途中アビーの仲間のノラを病院で殺すところや、最後に海辺でアビーを殺そうとするところで、容赦無くプレイヤーに□ボタンを押させてくる。勝手にカットシーンを進めてくれない。プレイヤーが□ボタンを押して攻撃を続けないとゲームが進まない。おれはそんなことしたくないのに。でもそこでエリーの非道にプレイヤーを関与させることで「自分がやったのだ」という認識を強く印象付けさせる。「何やってんだよ!」じゃなくて「やってしまった…」にさせる。すごい。
まあでもプレイヤーが「殺したくないけど、そうしないと進まないからしょうがないんだ」と思っているように、物語の中のエリーもそうだったのではという感じもある。つらいですね。
その他
- ギター演奏、一応毎回ほとんど間違わずに出来てはいたけれど、いまいち何をやっているのか分からなかった。これ正解なの?なんなの?って感じで一度も納得できたことがない。
- だから最後のシーンでまたあれが出てきたとき、また一応指示通りにはできたけど、え?これ左手の指ないから弾けてないってこと?どういうこと?と思ってしまった。なんかもったいない。
- 「犬を殺すのが辛かった」というレビューをたくさん見たけど、そういう人は人間を殺すのは平気なんだろうか? 犬の方がリアリティを感じるのかな?
- フォントが明朝体なのに少し違和感があった。英語版はサンセリフぽいが、いいゴシックの日本語フォントがなかったんだろうか? 変にホラーぽい気もするし、「ダィスク」みたいな間違った日本語化って感じもする。
- 農場のシーン、唐突に牧歌的な雰囲気でエンディング感出してきたけど、「田舎の農場で幸せに暮らしましたとさ・・・って終われないよ!それどんな感性?」とおれの中のスチャダラパーが歌ったわ。